【モンタージュ】有栖川誉の詩に関する論理的検証【デカンタージュ】

 

みなさんこんばんは。お久しぶりの更新になってしまい、誠に申し訳ありません…。
ツイッターの方でもお話した通り、転職やら何やらで少し忙しい日々を送っております。年内いっぱいくらいは少し落ち着いた更新ペースになるかもしれませんがそんなこと言いつつ普通に更新するかもしれませんし、なんとも言えませんね(笑)
皆さんに忘れられない程度には更新しようと思います。とりあえず第5回公演感想は年内までに終わらせる方向で!

さて、今回は筆者と同タイプである有栖川誉さんのコラムです。あ、今回は心理学は全く関係ない記事ですので(笑)ご興味ありましたらお読みくださいね。そして今回は「音」を体感してもらう記事ですので、音が出せない環境の皆さんはぜひとも!イヤホンやスピーカーのご準備をお願いします




韻律のハテナを大解剖!

世界の詩と日本の詩

皆さん小説などは読まれる方も多いとは思いますが、詩って案外馴染みがないものだと思います。広義での詩と考えると曲の歌詞なんかが詩に近いものがありますが、音楽のない詩って国語の教科書で読む以外読んだことないなぁという方もかなりいらっしゃると思います。
私は以前から詩は結構好きでして、ゲーテやヘッセなど海外の著名な文学者の詩集などを愛読しているのですが、海外の詩を読んでいると、日本の詩とは大きく違うことに気付きます。そして、その大きな違いを知ることが有栖川誉の詩を楽しむための最大のポイントとなるのです!

海外のポエムは「韻律」が重視されている!

誉の詩の特徴はなんと言っても韻律ですね!ポップかつリズミカル!皆さんゲーム内で散々見ていると思うので具体例は出さずに進めていきますね。クドくなりますし(笑)
これは海外の詩ではかなりポピュラーな技法であり、ほとんどの詩は韻文になっています。それはそれは、聴いていて脳が気持ち良いリズムです。
しかし日本の詩は普通、韻を踏みません。それは詩だけでなく俳句や和歌の類も然り…。
これは日本語が基本的に動詞や形容詞で終わる文章が多いこと。(例:甘ぇモンを食う。推しの顔が良い。)そして海外の言語に比べて発音の数が少ないことが原因であるかと思われます。方言などを除外すると日本語の母音はa/i/u/e/oの5つしかないですからね。
そしてもうひとつ、文章や単語そのものに英語のような抑揚がないこと。英語のアクセント波形が「VVVVV」こうであったとしたら日本語のアクセントなんてせいぜい「~~~~~」こんなもんです。なので日本では短歌や俳句のように言葉の数を定めて無理矢理リズムをつけたものが流行してきたのだと思います。

ま、言葉で説明するのもアレなんで手っ取り早く海外のヒットソングでも聞いてみましょう!
2年前くらいに大HITした曲なので皆さんもどこかで聞いたことがあるかと思います!
今回の記事ではこの楽曲を中心に韻律について説明して参りますので、聞きながら記事を読んでいただくと分かりやすいかと思います。

「Closer feat.Halsey」The Chainsmokers

メロディのリズムと言葉のリズムがばっちりとハマっていて聞いていて気持ち良いですね♪
サビに出てくる単語をいくつか抜粋してみるとその理由がとてもわかりやすいかと思います。

Closer、Rover、Shoulder
Corner、BoulderOlder

そう、erで韻を踏んでいます。韻を踏んでいるのはサビの部分だけではありませんが、ここがとてもしつこいくらい韻を踏んでいるのでわかりやすいですね(笑)
このように歌詞を含む海外の詩というのは韻律をとても重視して作られたものが多く、言葉の意味が分からなくても語感の良さ(リズム)を体感的に楽しむことができます
リズムやビートを伴うのは「音楽」だけではなく、「言葉」もまた然りだということが、この曲を聴くとご理解いただけるかと思います。好きか嫌いかはともかくネ(笑)

近年では“韻”が日本でもポピュラーなものに!

日本の音楽シーンで韻律が認識されてきたのは現代になり、海外の音楽の影響を受けたクリエイターが台頭した2000年頃でしょうか。著名な方で言えば宇多田ヒカルさん、つんく♂さんなどが代表的です。
また日本語ラップがお茶の間に広く浸透したのも2000年代ですね。かつてのDragon AshやKICK THE CAN CREWなどです。

・『わがまま 気のまま 愛のジョーク』 モーニング娘。(つんく♂) 2013年

▲痛快なダブステップサウンドに合わせたフォーメーションダンスが話題だった1曲ですが、それだけでなくとにかく言葉の語感がとにかく良い!素晴らしい韻律を持った楽曲です。つんくさんの曲はもっと過激に韻を踏んでいる「韻律を楽しむための楽曲」もたくさんあるのですが、この曲に関しては韻律が重視されているにも関わらず「クールな女のコの無意識下の寂しさ」というテーマを見事に表現しています。

『越冬』 ICE BAHN  2003年

▲あまりメジャーではないかもですがICE BAHNというヒップホップユニットの「越冬」という楽曲です。韻律(ライム)を学ぶうえでぜひ聴いていただきたい一曲。「滑りだしたICE BAHN/常に明日無い不安/夢見がちなマイプラン」など、にも称賛すべき押韻がたくさんあります。日本語の面白さと奥深さを感じる一曲ですね!

このように近年では日本の音楽シーンでも韻律が馴染みのあるものにはなって来ましたが、韻律を重視することはヒップホップ等のライミングが必須条件となる音楽ジャンルを除けば「あたりまえ」のことではありません。

リズム=音の規則性

最初にご紹介したThe Chainstorkersの「Closer」は韻を踏んでいる部分が一応サビに当たると思うのですが、サビのあとに同じメロディ・リズムが電子音サウンドになってリズムの繰り返しを強調する形を取っています。歌入りの時よりも曲のメロディとリズムがより分かりやすい形になっているのですが…そう、別にこの曲はリズムも一定でメロディもめちゃめちゃ単調です(笑)
じゃあ一体何が人々の心を掴んだのかと言うと音の上がり下がりによるアクセントと言葉のリズムが調和していて脳が快感を覚えるからだと思います。この曲のサビのメロだけでも何故かerの響きを感じるのです…!!このアクセントというのは立派な韻律になります。
欧米の楽曲は非常にこの手のものが多いですが、海外の音楽を聞き慣れない人にとっては「どうしてこれがヒットしたの?」感じるのかもしれません。

そしてモーニング娘。を始めとするつんく♂さんの楽曲も総じて欧米的な手法がよく用いられています。彼はメロディよりもリズムを重視する作風です。あんなにクセが強いのにメロディ自体はわりと無特徴なんですよ!大HITした「恋愛レボリューション21」のサビも日本のヒットソングとは思えないほど地味~なメロディです(笑)そのかわり「なんとなく脳に残るフレーズ」だったり「何度も聞いていくうちにクセになっていく楽曲(スルメ曲)」が数多く存在します。なんかよくわからんけどクセになる。これはまさしくリズムの力とも言えます!!

リズムというのは「音の規則性」のことを言います。ある一定の時間の周期でどのような拍が刻まれているのかということなので、それが規則的でも不規則的でも構いません。「不規則的で気持ち悪いリズム・・・」でも立派なリズムです(笑)
ただ、ご紹介した音楽のリズムに共通するのは聴いていて何だか気持ちが良いことでしょう。それは我々の身体の中に潜む「規則性」とマッチしているから起こる現象ではないかと考えております。

余談ではありますが、ここで満を持して(?)紹介!我らがオーイシマサヨシさんも同じくリズム重視の作風ですね。

「規則性のあるライミング」などはこの楽曲ではされていませんが(誉のキャラソン「奇天烈ポエマー」なんかはつんく♂さんの作風と似ていますね)「夢をいっぱい咲/かせよう 君とパッパッとパッとパッとね」なんかは、リズム×語感の良さでなんとな~く耳に残る感じがします。

The Chainsmorkes「Closer」と有栖川誉の詩の共通点

またまた「Closer」の話に戻ります。この曲の歌詞がどういった意味なのか、見てみましょう。

※こちらのブログを参考にさせていただきました。

「元恋人の二人が久しぶりに会って、、焼けぼっくいに火がついちゃった」とありますが、要約するとだいたいそんな感じかと思います。直訳すると、元恋人と久々に再会してホテルのバーでいろいろ昔話をしているという内容です。
しかし!その昔話の中には「ローバー(車の名前です)の後部座席」だとか「ボールダー(コロラド州の都市名)に居た」とか…そこまで詳しい情報要らなくない!?みたいなことまで書かれています(笑)

そうこの曲…おそらく全てが

We ain’t ever getting older (僕らはあの頃と変わらない)

曲中頻繁に出てくるこのフレーズと繋がるように出来ているんです。言葉の韻律も、言葉の意味もね。って気付いたとき、めちゃくちゃロジカルに作られた曲だなぁと感心しゾクゾクしました…。

ローバーもボールダーも「エバー」「オーバー」と同じリズムを持った言葉です。その言葉を「僕らはあの頃と変わらない」のあの頃と半ば無理矢理くっつけている感じ。なので「なんでボールダー?」などと、細かい言葉の意味なんて分からなくて良いのです。

そしてこの現象はまさに!誉の詩にも同じことが起きていますよね。いかんせんこの曲以上に言葉の意味がわからない!なのに万里あたりに「どういう意味だ?」なんて聞かれちゃったりしている(笑)いいですか万里くん、分からなくてもいいんです!!なので東さんが言っている「韻を踏んでいてポップ」という感想はすごく的確だなと思いました。めちゃめちゃ筋が立っていないことをしているように見える誉の詩ですが、大きなテーマに向かってリズムの良い言葉を集めて→組み合わせるという工程は非常にロジカルなものであり、世界的なDJであるThe Chainsmorkersもほぼ同じことをしていたのです…!

リズムは万国共通のアミューズメント!

言葉が違っても、文化が違っても、私たちが身体の中に「リズム」を持っていることは共通しています。国籍も年齢も性別も関係なく、皆が楽しめるものです。また言葉であれば文字にして「目」で見て頭で再生することも可能です。リズムは音楽だけでなく目で見る楽しみ方だって出来ると私は考えております。一応、このブログも、なるべく皆さんがリズム良く読めるようにな文章にしているんですよ!
誉もがそれら「言葉のリズム」に重きを起き、人々が「楽しい!」「心地よい!」と感じるような詩を作っているのかな、と私は考えております。意味を考えたり情緒的な表現をしたりなんて、今まで皆がやってきたことです。それを敢えてせずに、新しい文学の可能性に挑戦する……彼の性格を考えると非常に筋の通った表現の仕方だなあ~と感じますね!

これからも彼から数々の詩が詠まれることかと思いますが、それら「言葉のリズム」に着目して楽しんでみてください!声優さんの声がついていれば一番良いのですが…!




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